嗤うペテン師


「久しぶりだね」

彼は私の部屋にいた。私が呼び出したからだ。

「……そうだな」

明らかに警戒している彼。彼にとってこの部屋はもう、安心できる場所ではなくなったようだ。

「おめでとう。結婚して、社長には次期社長だって期待されてるそうだね」

「……。
俺に何の用だ?」

「そんなにトゲトゲしないでよ。前にも言ったでしょ。
私は君の幸せを願っている。それは今も変わらない」

この部屋には三人、人がいる。
私と、彼と、彼の子ども。

赤ちゃんは眠っているから、私は彼と二人で会話することができた。
< 19 / 38 >

この作品をシェア

pagetop