嗤うペテン師
「……!」

彼の手が私の首を両手で掴む。
やはり男だなぁ、力が強い。なんて、思っていたりした。

去年の私なら、彼に殺されるのなら本望だったろう。
彼の幸せの為に犠牲となるのだ。

だけど今は違う。護るべきものが増えてしまった。
愛した人との子を、私は護りたい。

きっと彼は、私を殺した後にこの部屋から逃げ出す。
赤ちゃんは誰にも発見されることなく死んでしまう。

そんなのだめだ。
彼も幸せになれない。赤ちゃんも護れない。
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