smile
 
 大小のマグカップの中のココアを混ぜ、私はトレイにのせると、それを娘のところまで持っていき、テーブルに置いた。

「熱いから気をつけるのよ」

「ん」

 小さい方のカップを取ると、娘は液面を2・3度ふいて、一口ふくんだ。

 表情に変化はない。

 熱いのか温いのか、甘いのかそうじゃないのか、まったく読み取れなかった。

 私も続いてココアを一口飲んだ。

 瞬間、舌に、口全体に、電気のようなものが走った。


 熱い。


 この子、平気な顔して…火傷しなかったのかしら…。

「ごちそうさま」

 私が躊躇していると、娘はそういって、カップとビスケットがのっていた皿を流し場へ置き、玄関へ向き直った。

「ハナちゃんとレンちゃんと遊んでくる」

「……気をつけてね」

「うん」

 慌てるでもなく靴を履いて、娘は重いドアを開け、遊びに出て行った。

 きっと、友達と遊んでいたって、笑うことなんてないんだろう。
 
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