smile
 

 その日、保育園の先生からまた電話があった。


「朝からずっと、あんな感じで…」

 娘を預けている保育園を訪れた私は、子供たちが元気に走りまわっているホールへ通された。

 保育士さんが示した方を見ると、窓際に置かれた平均台に腰かけ、静かに外を見つめる娘がいた。

「…具合が悪いみたいじゃないですし、私どももどうしていいか…」

「…すみません、家でもあんな感じで…今日は、もう連れて帰ります」

 そうですか、保育士さんはホッとしたような顔をしてそう言った。

 よほど娘に困惑していたのだろう。

 私は娘に歩み寄り、名前を呼んだ。

「愛深」

「………ママ?」

 ゆっくり振り向くと、娘は不思議そうに私を見上げた。

「…愛深、今日はママと一緒にお出かけしよっか」

「え…?」

 娘は困惑していた。けれども、わずかに期待や歓喜を向けてきたような気がした。

「愛深の好きなところ、どこでも連れてってあげるから。ね?」

「……なら、ツグ、お家が良い。ママと一緒に、お料理したり、したい……」

「お家で良いの?」

「うん」

 うなずいた娘に、私は手を差し伸べた。

 顔色一つ変えず、娘は差し伸べられた手をとった。
 
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