smile
 
「失礼します」

 保育士さんに深く礼をして、私は渡された荷物片手に娘の手を引いて、保育園を出た。


 そう言えば、娘は笑わなくなったのと同時に、表情の変化を見せることも無くなっていたかもしれない。

 泣いたのは何度か見た。けれど、『私の前』では、顔の形を変えない。

 だから、さっき見た期待や歓喜の色を、私は敏感に感じとったのかもしれない。

 他人が見たら、多分、気づかないほど淡い色だったと思う。


 家に着くと、私は早速冷蔵庫を開けた。娘も後ろから覗きこむ。

「何作るの?」

「…ん~…ポテトサラダと、ミートソースと、焼き豚さんかな」

「ツグは何したら良い?」

「そうねぇ…じゃあ、レタスさん洗ってもらおうかな」

「わかった~」

 私がレタスを探し出す間、娘は届かない流し場に精一杯背伸びして、まず手を洗った。
 
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