鳩羽の独人
「あんた、いくつだよ」
真っ赤な唇に咥えられたタバコを離しては俺の顔に向かって息を吐く、なんて下品な女だ。
ぽてっとした下唇を震わせながら、彼女は呟くように『じゅーろく』と言った。


こんな事言ってはいけないが、人生、いや人間の失敗作とまで言える人生の落ちっぷり。そんな女。

『英寺高校のエリートお兄さん。ライター欲しかったの。』
こいつはニヤリとしか笑えないのだろう。俺は黙ってしばらく彼女の唇を眺めていた。

時計の秒針の音と、彼女の煙を吐く吐息が小さな地味なこの部屋に響いていた。
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