君を瞳に焼きつけて
ふわりと優しい花の香りがする。
あれ?
私…
この香り、嗅いだことがある…?

目を開けると、光に目がくらんでパチパチと瞬きをする。
少し顔を動かすと

「陽月ちゃん…?」

隣にいたのは、大きな丸い目に涙をいっぱい溜めた女の子。


「…ッ陽月ちゃん!!」

ついにその女の子はわぁっと泣き出して、私にしがみついた。
わぁわぁ泣いている女の子は、私を『陽月ちゃん』と呼んでるけど…




『陽月ちゃん』って、誰?




女の子の泣き声が響いていたのか、すぐに先生らしき人が入ってきた。
その先生は入ってくるなり、少しほっとしたような表情を浮かべていた。


心臓がバクバクしてくる。
え?
私、


この人達を知らない。


この泣いている女の子は誰?
白衣を着ている男の先生は誰?
ここはどこ?







私は、誰?









心臓がさらにバクバクと激しく打つ。
息が苦しい。



「はっ、はっ、はぁっ」


「陽月ちゃん!?」


息が、出来ない…


「陽月ちゃん!!」


その声を最後に、私は意識を失った。
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