君を瞳に焼きつけて
目を開けると、目に入るのは1枚の張り紙。

『机の上のノートを見て』

ゆっくりと体を起こして、机に向かいノートをめくった。

『初めまして』

そのノートは、この言葉から始まった。



コンコンッ



ドアをノックする音が聞こえて、入ってきたのは、

「陽月?起きてる?」

栗色の柔らかそうなボブの髪、ほんのり焼けた肌、長いまつ毛。
すらりと長い手足を持ったその子は、
私を『陽月』と呼んだ。

「…その様子だと、覚えてないかな?」

少し顔を歪めてそう言うと、
私をベッドに座らせ、それに向かい合うように彼女が床に座った。

「ノートは読んだ?」

コクンと頷くと、

「あなたの名前は白石陽月。ここは、病気の子とか家にいられない子が住む家よ。
私は、あなたの隣の部屋に住んでる神月彩咲。」

かんづき、さえ…。

「私…、あなたのこと、その…」

「覚えてないんでしょ?」

図星をつかれて、ビクッとしてしまう。

「その、ごめんなさ「あぁ、気にしないで。大丈夫だから。」


謝ろうとしたけど、遮られてしまった。
言葉はズバズバ言ってくるけど、きっと彩咲さんは優しい人だ。
直感…っていうのかな?
でもそれはもう、確信に近い。
だって、彩咲さんの私を見る目は、


とても優しいから。






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