君を瞳に焼きつけて
転校してきてから数日が過ぎ、
この学校にも大分慣れてきた。

ここの人達は、みんな温かい。

隣の席の佐野君をはじめ、色んな人が私に話しかけてくれて。
学校や町を案内してくれたり、週末遊びに誘ってくれたり。
家の近所のおばさんたちからおすそ分けをもらったり。

転校続きの私は、友達なんていらないなんて思っていたけど、こっちに来てから笑いが絶えなくて。
両親も喜んでいた。

そんなある日。


「なぁ、陽月。今日、家に来ねぇ?」

佐野君は、私のことを『陽月』と呼ぶようになっていた。

「どうして?」

「母さんがさ、陽月のこと見たいって。」

「私のことを?」

私なんかを見て、どうするんだろう。

「『美少女転校生はどんな子なの!?』って。」

「はっ!?」


び、美少女!?

「いやいや、それ私じゃないでしょ!」

「いや、こんな田舎に転校生なんて、そうそう来ねぇから。」

うっ。。
確かにそうかもだけど。。
その時。


〜♪〜〜♪


私の携帯が鳴った。
携帯を開くと、お母さんからの着信。
どうしたんだろう。

「もしもし?」

『あっ、陽月?』

「どうしたの?」

『あのね、さっきお母さんの実家から電話があってね。おばあちゃんの具合が良くないらしいの。』

お母さんの実家は、ここから結構遠い。
夕方の今から行けば、確実に泊まりだろう。

『お父さんも仕事遅くなるみたいでね。
私も多分泊まりになるから、陽月は佐野さんのお家に行って。』

「…え!?」

い、今なんて言った!?

『どうしようか悩んでるときに、ちょうど佐野さんに会ってね。事情を話したら、家に泊めてあげるわよって。』

佐野さんって…
佐野君の家だよね?
えっ、
と、泊まり!?

『お母さん、もう出なきゃいけないから。
本当ごめんね!出来るだけ早く帰ってくるから!じゃあ、またね!!』

「えっ、ちょっ!!」

プーップーッ

私が反論しようと思った時にはもう遅くて。
電話が切れた音しか聞こえなくなっていた。

隣では佐野君が不思議そうな顔をしていて。
私ははぁ…と、小さくため息をついた。


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