君を瞳に焼きつけて
気付くと、麩から光が差し込んでいて。

(…。一睡も出来なかった…。)

眠ったら、夢でしたってなる気がして、
不安でドキドキして眠れなかった。


(夢、じゃ、ないんだよね。)


少し物思いにふけっていると、


「陽月ちゃーん?起きてる?」

蕾君のお母さんの声が聞こえた。

「あっ、はい!起きてます!」

麩の向こうに影ができた。

「朝ご飯出来たから、着替えていらっしゃい。」

「あ、はい。」

私はハンガーに掛けてあったセーラー服に着替え、持ってきた櫛で簡単に髪をとかして廊下を歩き始めた。





リビングのドアを開けると、
ふわりと美味しそうな香りがして、

「おはよう、陽月ちゃん。」

優しい笑顔で蕾君のお母さんが迎えてくれた。
その笑顔につられるように、私も笑った。


用意してくれた朝ご飯の食パンとサラダとスープとフルーツヨーグルトを食べていると、


ガチャッ


「あ、おはよう、蕾。」

「…はよ。」

その一声だけで、心臓がバクバクする。

隣のイスに座ると、

「…はよ、陽月。」

蕾君は蕾君のお母さんに少し似た顔で優しく笑ってて、
また私はつられるように笑顔になったんだ。

「おはよ、蕾君。」
















< 25 / 30 >

この作品をシェア

pagetop