少しずつ、見えるミライ
振り返った途端、心臓が止まりそうになった。

せっかくイイ気分になってたのに、一瞬で、怒りやら嫉妬やら憎しみやら、こいつに対するドス黒い気持ちで、俺の心の中は覆い尽くされた。



なんで、こんな所に来んだよ。

今さら、何しに来たんだよ.......



そこには、彼女を傷つけ、長い間、苦しめていた張本人が立っていた。

俺が、どうしても許せないと思う奴が。



「あ、この前の.......。え~っとぉ、店長はぁ.....。」

「今日は、内田はお休みです。待ってても会えませんから。」

「.....そうですか。」

「はい。」

「じゃあ、仕方ないな。土日はいますよね? また出直して来ます。」

「.......。」



そいつは、俺としっかり目を合わすと、意味ありげに微笑みながら、駅の方へと姿を消した。

はぁぁぁ.....もう、すげー緊張した。

口から心臓、飛び出すかと思った。



でも、案外、あっさり帰ったな。

何か、呆気ないって言うか、そう来るかって言うか.......

やたらと余裕のある態度が、気に食わないけど。



「嘘つき。気持ちはわかるけどさ、それ、ちょっと卑怯なんじゃない? てか、ねぇ、あの人、何者? もしかして、元カレとか?」

「......え?」



うわ~っ、しまった!!

彼女と会わせたくない一心で、何にも考えずに、速攻であいつを追い帰してしまった。

未帆は今、デパ地下の店長会議に出席してるだけで、もうすぐ此処に戻って来るっていうのに。

嫉妬に狂って、無意識に嘘ついてんじゃん!!

.....あぁ、もう、俺、サイテー。
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