残酷な運命
エレベーターから降りると、まるで別世界だった。
赤いカーペットにきらびやかなシャンデリア。
見渡す限りゴージャスな造り。
「今からお会いしていただく方はbossにほど近い幹部の皆様なのでくれぐれも失礼のないようにお願いします」
「…はぁ」
幹部?重役みたいなものかな?
奧に向かって廊下を進んでいくと、一際豪華な扉が見えた。
こんこん
「地獄の案内番です。入ってもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
「失礼します」
ガチャ
「お客さまをお連れしました」
中には真っ黒いフードを着た人が1人、2人……、10人。
その中の1人は王者が座るような椅子に座ってる。
その人の両脇に守るように立っている人が2人。
後の人は片側にずらっと並んでいる。
「…お客さま…?」
氷のような冷たい声が玉座の右側から聞こえたと思ったら、一気に視線を感じた。
「…依頼人かしら?」
「…いえ、bossにお会いしたいと」
「…bossに?」
低くなる声。
背筋が凍りつくような空気。
緊張感が増す室内。
「…下がっていいわよ」
「…かしこまりました」
結局、最後まで絶対顔を上げることがなかった受付嬢。
顔を下げたまま出ていってしまった。
「…さて、」
再び冷たい声がし、私は現実に引き戻された。
「あなたの目的はなに?」
目的…。
…空くんに会うこと。
「…へぇ、あなたbossのことを“空くん”って呼んでるのね」
「!?」
な、なんで!?
この人心読めるの!?
やだ、怖い!!
「そんなに怖がんなくても…」
もう、ほんとなんなのこの人!?
しかもさっきからこの人しか話してないし。
ほかの人見てるだけじゃなく助けてよ。
特に玉座に座ってる人!!
「この方は世界のトップよ。口を慎みなさい」
…この世界…?
「あなた、ここがどういうところかご存知ないの?」
小さく頷くと声からして女の人はため息を吐いた。
「呆れた。そんなことも知らないでよくもまぁ、ここまで来れたものね」