残酷な運命
「わざわざ自分から来てくれるなんてうれしいな」
「えへへ」
私は空くんがうれしいと言ってくれたから自分もうれしくてその言葉に隠された本当の意味を知るよしもなかった。
しばらくして、
「…もう、お別れだね」
突然空くんが言い出した。
「…もうそんな時間か…」
もっと空くんと居たかったな…。
じゃあ、と言って帰ろうと立ち上がったら、
「あら、帰るつもり?」
ゆかさんが唐突に口を開いた。
「え?」
…どういうこと…?
不思議に思っていると、
幹部達が一斉に立ち上がった。
「…えっと…?」
「あれだけ知っておいて帰らせるわけがないでしょ」
本能的に身の危険を感じて逃げようとすると誰かにぶつかった。
「あたっ」
「大丈夫?」
「空くん…」
空くんは微笑んでいた。
その笑顔に安心して私も自然と笑顔になった。
だから油断してたんだ。
空くんは絶対そんなことしないって…。
「バイバイ」
ブスッ
「…ッ!?」
体に違和感を感じて下を見ると……。
「……え…?」
お腹は真っ赤な“液体”で覆われていた。
「…う…そ…」
バタ
最期に見たのは、空くんの満面の笑みだった。
まるで今から楽しいことがあるかのように。
待ち望んでいたことがこれから起こるかのように。
…ああ、私は空くんに刺されたんだな…。
そこで私の意識は途切れた。