タマシイノカケラ
「朝帰り、バレたらまずいんじゃねーの?」

「気にしないで。親もいつもの事だと思ってるし」

──本当。

朝帰りなんて、いつもの事。

でも、ナオヤに話してるのは、嘘。



ケータイを畳むと、ナオヤは、

「そろそろ出ようか」

と切り出してくれた。
私はいつまでも、一緒に居たかった。

でも、私の嘘に気を遣ってくれるナオヤに申し訳ないと思い、席を立った。






──私は、どうしたいの?






車に乗り込んで、どこの道をどうやって来たか、覚えてない。

バイバイ──。

「また会おうな」

覗きこみながら、助手席のドアを閉める。
顔を上げると、歩き出す姿が見えた。

いつまでも、一緒に居たいと思う人は、道路の向こう岸まで離れてしまった。

ナオヤの背中を見送りながら、私の手の中にはしっかりとケータイが握られていた。

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