むとうさん
「…ありがとうございます。」
こんなことで照れてしまうなんて。私ってなんて簡単な女なんだ。いや、武藤さんの前限定かもしれない。
いつからこんなに武藤さんにめろめろになってしまったんだろう。

恋はどんなとき生まれるんだろう.
知らなかった部分を知っていったとき なのかもしれない.

「武藤さん、年末年始の仕事って何するの?」

「んー久しぶりに露店で鯛焼きでも焼くかな。」

「え、武藤さん焼くの?」

「おう、川崎大師で年越し初詣のついでにな。正月だしよ。」

サービス業って柄じゃないじゃない。この日だけは多分特別なんだろう。でも、この人が焼いてたら…ちょっと買うの戸惑うよなぁ。

「おい、お前何にやついてんだよ。」

「にやついてません笑 ずっと鯛焼き焼くの?」

「俺は夕方の最初だけ。後は川口とかがやるの。」
だよね。この人がずっと立ってたら売れないもの。あの坊主頭の川口さんのほうがまだ愛嬌があるもの。
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