むとうさん
「よぉ。」

濃紺の2つボタンのスーツを着るむとうさんがベンツに手をかけて言った。

ちゃんと正面から全身を見たのは初めてだったけど、むとうさんは思っていたより身体が大きかった。

バーじゃ座ってたから分からなかったけど、背は175ぐらいだと思うんだけど、すごくいいがっしりとした骨格にバランスよく筋肉がついている。アルマーニのショーケースのマネキンみたいな体型をしている。

眼鏡をかけていて知的な雰囲気だし、顔のパーツが尖った感じだから少しその体型は意外にうつった。まぁ顔立ちもいかついっちゃいかついんだけど。

「あのそれ…むとうさんの車ですか?高そう。」

「じゃなきゃぁこんなとこで声かけねぇよ。」

ビシッと着こなしているスラックスのポケットから無造作に鍵を取り出して、ピッとロックを解除した。

「何、買い物したのか?」

「はい、昼ごはんの材料を調達しに。」

「乗ってくか?」

え?うそ?でも家こっから5分だけど。でもこの状況、首を縦に振るしかなかった。なんだろう、最初から緊張感のある人だったけど今日はなんだかむとうさんがアグレッシブだ。

バーでは少し他人行儀だったけど。むとうさんの中でも私を知り合いのカテゴリーに入れてくれたのかな。


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