むとうさん
夜ご飯に、私が来たからとお寿司の出前を頼んでくれた。松寿司が食べきれないほど並ぶ。
「慶子ちゃん、仕事はどうなの?自動車の設計してるんだっけ?」
「そうです。だんだん慣れてきたところです。まだまだだけど。」
向かいでおじさんと父は日本酒を飲みながら、政治とか仕事の話なんかで語り合っていた。父はもう工場を引退しているが、たまに現場に出たりしている。おじさんは、若い頃に比べれば少ないが、まだ働いている。
鈴木は母方の姓だ。父は母と結婚するかわりに婿養子になった。父方の祖父母の話はあまり聞いたことがない。
学もなく、ふらふらしていた父は、母に一目惚れして、一生懸命工場で働いて、山崎家から離れて母と一緒になったのだ。
いつも明るく豪快で、仕事には真面目で家庭を大事にする、何の問題もない様に見える父も、おじさんの家で羽を伸ばしていたのかもしれない。
おじさんと父は、笑ったり真剣な顔をしたりして語り合って、時々父は涙を流していた。そしてお酒が回ってきたら大抵同じ話をするのだ。
私と母の身内贔屓の話と、おじさんへ何か感謝する話。
後者の話はよく聞こえなかった。子供心ながら、なんとなく、父が長男であるのに山崎家を離れてしまったことなのかもしれないと感じていた。
「慶子ちゃん、仕事はどうなの?自動車の設計してるんだっけ?」
「そうです。だんだん慣れてきたところです。まだまだだけど。」
向かいでおじさんと父は日本酒を飲みながら、政治とか仕事の話なんかで語り合っていた。父はもう工場を引退しているが、たまに現場に出たりしている。おじさんは、若い頃に比べれば少ないが、まだ働いている。
鈴木は母方の姓だ。父は母と結婚するかわりに婿養子になった。父方の祖父母の話はあまり聞いたことがない。
学もなく、ふらふらしていた父は、母に一目惚れして、一生懸命工場で働いて、山崎家から離れて母と一緒になったのだ。
いつも明るく豪快で、仕事には真面目で家庭を大事にする、何の問題もない様に見える父も、おじさんの家で羽を伸ばしていたのかもしれない。
おじさんと父は、笑ったり真剣な顔をしたりして語り合って、時々父は涙を流していた。そしてお酒が回ってきたら大抵同じ話をするのだ。
私と母の身内贔屓の話と、おじさんへ何か感謝する話。
後者の話はよく聞こえなかった。子供心ながら、なんとなく、父が長男であるのに山崎家を離れてしまったことなのかもしれないと感じていた。