私、可愛いですけど何か?
不機嫌になった麗美は
ナンパされに街へと出向いていた
勿論、授業を抜け出して…
「こんにちは。1人?」
ぶらぶらし初めて早10分
早速男が釣れた
さすが麗美だ。
道行くどんな女性よりも
ひときわ美しい
『そうだけど』
「お茶でもしない?」
『お茶はいいから、ラブホ行かない?』
「えっ…??」
『だめ?』
「いやっ…いいの?」
『何が?』
不機嫌な麗美はいつにもまして
直球な話し方をする
麗美ほどの容姿の持ち主に
息なりラブホへ誘われたら
たじろぐのも無理はない
話のリズムが噛み合っていない
「いや…じゃあ、行こうか」
そう言って男は麗美の腰に手を回し
リードしながら歩き始めた
『…何ここ』
着いた先は、どう見てもカラオケボックス
…まぁいいけど。
ドンッ──…
受付を済ませて部屋に入るなり
麗美はソファに押し倒された
制服の下に冷たい手が滑り込んでくる
「お前らももういいぜ、来いよ」
突然男が声を発した
『…え?』
なに?
ガチャンと部屋のドアが開く
扉の方へ視線を移すと、数人の男達が入ってきた
「うひょー、可愛い子」
そう言いながら男達は麗美に群がると
体中を弄りはじめる
麗美は、まるで自分の身体ではない
様な錯覚に陥っていた
身体と心が分離して、遠くから
犯されてる人形を眺めている様な──…
そっか。
私がいつも何も感じない理由って、これか…
気付けば、私は子供の頃からそうだった。
スカイツリーに登って夜景を見ても
花火大会に行っても
どこか他人事というか…
テレビ画面に映ってる風景を眺めている様な気分だった
周りの人間が感銘の声をあげても、私は共感出来なかった…
人間は、こんなものを見て何が楽しいのだろうとさえ思えた。
だってそうでしょ?
地上634meterから下を見渡せば
どんな風景か位、想像出来るじゃない
闇の中で光を放つ“人工物”を見て
喜ぶ人の気が知れない
昔、【人間失格】を読んで妙に共感した記憶がある
もしかしたら“私は人間じゃないのかも知れない”
そんな思考を巡らせながら、麗美は犯され続けた──…