私、可愛いですけど何か?
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『…どうかな?』
「むぐっ…んん!んまい!」
『えへへ、良かった…口に合って』
「神宮寺さんて料理上手なんだなー」
『そんな事ないよー。彼女さんのお弁当のが美味しいでしょ?』
まっ、あたしのはお惣菜詰めただけだけど。
「…いや、正直重いっつーか」
『え?』
「コロッケが好きって言ったら毎日コロッケだし…」
『えー。でも可愛い彼女さんじゃん!好きなもの食べさせてあげたいんだね、結斗くんに』
彼女持ちの男に近付く時、彼女の悪口を言う様なバカな真似はしない──…
「あっれ、南雲くん!ちとせちゃんが学校休んでるからって浮気かー?」
冷やかす様に、結斗くんのクラスの女子が話しかけて来た。
「ちがっ──」
「げっ。ってか、神宮寺麗美じゃん!南雲くん気を付けなよ、この女、男遊び半端ないんだから!この前だってユリ、この女のせいで──」
「やめろよ!」
「『え?』」
声を荒げた結斗に、双方驚き──…。
『あ…その、ごめん。神宮寺さんはそんな子じゃないよ…ただそれだけ』
結斗くんがそう言うと、女は腑に落ちない様子で離れていった
さぁ、最後の仕上げといきますか!
ここでもうひと演技…
『なんか…ありがとう。結斗くんも、あたしの悪い噂とか、色々聞いてるよね。あたしさ、男運ないのかな…好きになった人と続かないんだ…だから、色々言われちゃって。へへ、でも…』
トン…
隣にいる結斗に寄りかかり、制服の袖を遠慮がちにギュッと握る
さぁ、あたしの名ゼリフ──…
『初めて…あたしの事、理解してくれた人…。あたしの、見た目じゃなくて中身を見てくれた人…好きになっちゃったかも…』
「えっ、いや…え?!神宮寺さんが俺を!?」
ばくばくと、彼の心音が乱れてくのが手に取る様に分かる
『あ、ごめん。彼女いるのに、迷惑だよね、へへ…今の、忘れて…?じゃあ…』
そう言い残してそそくさとその場を後にする──…
スタスタスタ…
心の中で数を数える
スリー…
ツー……
ワン……
「神宮寺さん待って!」
………ビンゴ
麗美は勝利の笑みを浮かべた