【短編】地味男の告白を断ったらS系俺様になって迫られました

(夢でも幻でもなかった……)

 言いたいことを言うと離れていく里桜。

 その表情はやはり人畜無害。
 だが、その焦げ茶の目に宿るのは支配者のような強引な光。

「わ、分かった……」

 Yes以外の言葉を許してはもらえないと思った。


***

「じゃ、頑張ってねー」
「嫌なら断ってきなさいよ?」

 他人事だと思って面白そうに春花を送り出す由美と恵美。

 春花はお弁当を持ちながらその見送りに不満顔をぶつけ、無言で教室のドアのところで待っている里桜の元へ行った。


「……ぶっさいくな顔。行くぞ」

「なっ!?」

 端的に批判し問答無用で歩き出した里桜。

 まさしく俺様な態度に、春花は怒りを抱きながらも付いて行く。


(確かに俺様で強引な人が好きみたいなこと言ったけどさ……。こういう強引さはムカつくだけなんだけど!)

 里桜の背中を睨みながら心の中では思いつく限りの悪態をついた。


 そうやって連れて来られたのは中庭の花壇がある場所。

 今の時間丁度影が出来るところに、古ぼけたベンチがあった。


(こんなところにベンチなんて置いてあったんだ)

 中庭に来ることも少ない春花はベンチの存在など知らなかった。
< 12 / 40 >

この作品をシェア

pagetop