【短編】地味男の告白を断ったらS系俺様になって迫られました
(夢でも幻でもなかった……)
言いたいことを言うと離れていく里桜。
その表情はやはり人畜無害。
だが、その焦げ茶の目に宿るのは支配者のような強引な光。
「わ、分かった……」
Yes以外の言葉を許してはもらえないと思った。
***
「じゃ、頑張ってねー」
「嫌なら断ってきなさいよ?」
他人事だと思って面白そうに春花を送り出す由美と恵美。
春花はお弁当を持ちながらその見送りに不満顔をぶつけ、無言で教室のドアのところで待っている里桜の元へ行った。
「……ぶっさいくな顔。行くぞ」
「なっ!?」
端的に批判し問答無用で歩き出した里桜。
まさしく俺様な態度に、春花は怒りを抱きながらも付いて行く。
(確かに俺様で強引な人が好きみたいなこと言ったけどさ……。こういう強引さはムカつくだけなんだけど!)
里桜の背中を睨みながら心の中では思いつく限りの悪態をついた。
そうやって連れて来られたのは中庭の花壇がある場所。
今の時間丁度影が出来るところに、古ぼけたベンチがあった。
(こんなところにベンチなんて置いてあったんだ)
中庭に来ることも少ない春花はベンチの存在など知らなかった。