【短編】地味男の告白を断ったらS系俺様になって迫られました
里桜は座る場所を軽く払って、そこに座る。
その隣もサッと払ってくれたのはかろうじて紳士的とも言えなくもない。
無言の圧力に、そこに座れと言われているのが分かる。
まさか立ってお弁当を食べるわけにもいかないから座らないという選択肢は初めからない。
それにそのベンチの近くにはしだれ柳の木があって、丁度良く校舎側からの視線を隠してくれるようだった。
春花は諦めて里桜の隣に座る。
すると里桜は眼鏡を取って、長い前髪をかき上げてっぺんをクリップで止めた。
「あー、うざったかった」
そう言って現れた里桜の姿に絶句する。
地味ではあったが不細工でもないと思っていた。
だが、まさかここまで変わるとは……。
美男子と言うほどではない。
だが、好みで分かれるとはいえ十分イケメンの部類に入る。
しかも自信に満ちたような眼差しが彼のイケメン度を上げていた。
見られていることに気付いた里桜が、ニッと笑って頭を少し傾げる。
その姿も何だか様になっていた。
「何見とれてんの? もう惚れた?」
「なっ! 惚れてない!」
反射的に否定した声は思いのほか大きくなってしまう。
だが、里桜は気にした様子もなく「あっそ」と言って自分のお弁当を開き始めた。