【短編】地味男の告白を断ったらS系俺様になって迫られました
「あの、元カレ……で。……でも、一年以上……話してすらいなかったのに……」

 それなのに今日たまたま話しかけられたと、暗に伝える。


「……ヨリ戻そう、みたいな話してたみたいだけど?」

「っそれは! 幸春がガキくさいプライドから言ってただけで!」

 誤解されたくなくてハッキリ言ったのに、里桜は目じりをピクリと動かしイラついた表情をする。


(何よ、どうしてそんな顔するの? ……怖いよ)

 どうしてそこまで怒るのかも分からなくて、泣きたくなってくる。

 自分が怖がっているのも分かっているだろうに、里桜は態度を改めてはくれない。


 それどころか――。

「もういい。……もう(しゃべ)んな」

 そう言って強引に唇を重ねた。

 いつもの優しいキスではなくて、食いつくような……獣のキス。


 無理やりねじ込まれた舌が絡みついてきて苦しい。

 甘さなど無く、ただひたすらに奪うような強引なキスは……恐怖を掻き立てるだけだった。


「ふっ……やぁっ!」

 怖くて拒絶しても、顎を掴まれ逃がしてもらえない。

 怖くて怖くて、涙が零れた。


「うっ、ひっ……っくぅ」

「……はぁ……春花……」

 明らかな嗚咽になると、流石に里桜も唇を離す。
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