【短編】地味男の告白を断ったらS系俺様になって迫られました
「あ、いや、その……」
話せないというよりどう話せばいいのか分からないといったところなのだが、答えられずにいると何かを察されてしまったようだ。
「分かった、もう何があったかは聞かないよ」
「由美がそう言うなら、あたしも聞かないことにする」
「……」
何か言えないようなことがあったんだろうなと思われてしまったようだ。
(まあ、強引なキスをされたこととかはあまり言いたくはないけれど……)
「とにかく、それならやっぱりちゃんと相良と話をした方が良いんじゃない?」
「……え?」
「そうだよ。何かを消化しきれてないからそんな風にため息ばっかりついちゃうんでしょ?」
「っ!」
その通りだった。
あの日の翌日。
彼が何に傷ついたのかとか、ちゃんと話をしようと意気込んでいつものようにお昼を一緒にしようと思っていたら――。
「もう一緒に食べなくても良いって言ったじゃんか。今まで付き合わせてホント悪かったね」
と、人畜無害な笑顔の仮面で拒絶されてしまった。
あれからお昼はまた由美と恵美と一緒に食べている。
お昼を一緒にしないと、里桜とは話す機会など全くなく、理由を知ることも謝ることも出来ないでいた。