【短編】地味男の告白を断ったらS系俺様になって迫られました
「春花……?」

 春花の突然の変わりように里桜も驚き素が出ている。

 素を出してくれたことが嬉しくて胸がぎゅうっとなった。

 苦しくて、泣きたくなりながら春花は言葉を(つな)ぐ。


「大嫌いなんて言ってごめんね。あのときは、強引なキスで苦しかったから……気持ちがぐちゃぐちゃになっちゃってたの」

 そう、あれは里桜の強引なキスが原因だった。

 だが、それを言い訳になどしたくない。


「だからって傷つけるような事言って良い理由にならないよね。だから、本当にごめんなさい」

「俺は、傷ついてなんか……」

 否定する声は戸惑いが明らかで、それが嘘だとすぐに分かる。


「ううん、傷つけた。理由までは分からないけど……大嫌いって言葉は、相良くんを傷つけちゃったんだよね……」

「だから、傷ついてなんかねぇよ!」

 ムキになって大きな声を上げた里桜は、制服を掴んでいる春花の手も振り払おうとした。


 だが、春花は決意と共にしっかりと掴む。

(ちゃんと、伝えるの!)

「嫌いなんて、嘘だから!」

「っ!」

「大嫌いなんて本気で思ってない!」

 そこまで叫んで、一度止まる。


 続きを言う勇気が、必要だった。
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