【短編】地味男の告白を断ったらS系俺様になって迫られました
 一番大切な言葉を言って、拒否されるのが怖い。

 大切だから、いらないと言われたらどうすればいいのかと恐怖で喉が引きつる。


(早く、言わないと)

 気ばかりが急いて、それがまた言葉を紡ぐのを邪魔する。

 早く早くと思うけれど、大切な言葉だからこそ簡単には言えない。


「春花……?」

 待ってくれている里桜が促すように名前を呼んでくれる。

 おそらく、これが最後のチャンス。


「あ……」

 それでも出てこない言葉に春花は泣きたくなってきた。


 その時、風が吹き葉桜がさわさわと囁くように揺れる。

 その囁きに数週間前のこの場所を思い起こした。



(相良くんもこうだったのかな?)

 自分に告白してくれたとき、こんな風に怖かったんだろうか。


 そこに思い当たった。


 里桜は告白を断られても宣戦布告だと言って諦めなかった。

 そうだ、諦めなかったのだ。


(そっか……断られたからって、絶対に諦めなきゃいけないわけじゃないんだ)

 数週間前の里桜に背中を押してもらえたような気分になる。

 葉桜の囁きが、勇気をくれた。


「相良くん、あたしね」

 ドキドキと、鼓動が早い。

 葉桜に勇気をもらってもまだ少し怖くて、涙目になってしまう。


 それでも、伝えた。


「あたし、相良くんが大好きです」

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