【短編】地味男の告白を断ったらS系俺様になって迫られました
「り、おう……くん」

 勇気を出して名前で呼んでみる。

 流石に呼び捨てまでは出来なかったが、彼は呼んで欲しかったのだと知ったから。


「春花……」

 里桜は優しく目を細めつつも。

「くんはいらねぇ」

 とハッキリ告げる。

 だから春花はもう一度頑張ってみた。


 顔は固定されていて、恥ずかしくても目を逸らすことも出来ないが、何とか口を動かす。

「っ……りおうっ」

「良く言えました」

 里桜はニッと笑ってそう言うと、優しい口づけを落とした。


 甘い痺れに喜びが沸き上がる。

(取り戻せた)



 風に乗って、しだれ柳の合唱が聞こえてきた気がした。

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