お前のために歌うから。
そこから流れるのは 瞬の繊細で艶っぽい歌声。

翔太くんがアコースティックギターで伴奏しているらしい。


「これ?恋愛ソング?」

「そう」



瞬が頷くのを見て胸が苦しくなった。

やっぱり瞬には こんなに思ってる人がいるんだ…。
  


瞬が上を見上げてから意を決したようにあたしの方を見て


「…お前のこと思って書いたから」


「え?」あたしの掠れた声。


だって思ってもいない言葉だったから。


瞬があたしの目をじっと見る。
綺麗な彼の顔から目が離せない。


「明日のライブさ…」


うん、とこくり頷く。




「お前のために歌うから」



まって。


何それ。



あたしの目から涙が落ちる。


嘘でしょ。

こんなに思ってくれてたの…?


「おい、泣くなって…」笑いながらあたしの目尻に溜まる涙を拭ってくれる。


「あ、これチケット」封筒を渡してくれたので中身を見ると 「まって。超遠いじゃん」あたしは ぽかんとして彼を見る。


なんと後ろから3番目という席。

いつも良席を取ってくれる彼らしくない。
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