お前のために歌うから。
心菜の誕生日当日。

丁度CDのジャケ写を撮って帰ってきたら、
あいつから電話が掛かってきて。


「…どーした?」


「ねー、瞬 今日の夜あいてる?」

嬉しかった。素直に。


けど…

「や、あいてるけど…行けない」


昨日のヒロの言葉を聞いたら そう言うしかなかった。

「…ヒロがいるだろ?」冷たくそう続ける。


「あたしはヒロくんじゃなくて…」


は?

あいつの言葉の続きを考える。
俺だって鈍くない。

それって…そーいうことだよな。


まじで?

電話の前で固まる。


すると直ぐにインターホンが鳴る。

「…はい?」と出てみると


「あの、あたし…心菜です!」と聞き馴染みのある声。


まじかよ。すぐにドアを開ける。

うん、間違いなく心菜だ。


「つーかヒロは?」また可愛げのないことを聞く俺。

すると心菜が泣きそうな顔になり大きな声で「違うよ…っ」と言う。

え?


「あたし…瞬がいいの」と俺を見上げながら言う。

その顔 反則…。

好きな女に、んなこと言われて断れるわけねーだろ。
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