お前のために歌うから。



ライブが終わり、楽屋に戻った。


「ここ 見つけた?」と翔太が聞いてくる。


「見つけたけど…あいつ、泣いてた」


心菜は 口を手で覆って号泣してた。


どんだけ俺のこと信用してなかったんだよと思う。


するとマネージャーが急いだ様子で入ってきた。

「はー?ノックぐらいしろよ」笑いながら言うと

「心菜ちゃんっていう子が来てます!」


え?

「えっ!?」翔太も驚いたように声を上げて俺を見る。


「…まじで?どこ?」

「関係者ドアの手前です」

それを聞くと すぐに走り出した。


いた。
「瞬!お疲れ様~」心菜が嬉しそうに俺を見る。

「すっごく格好よかったよ~…わっ」

俺は心菜を抱きしめた。


「…見つけた」お前のことちゃんと。

「ほんとに?」「まじだし」フッと笑って言う。

「心菜」と耳元で名前を呼ぶと あいつはビクっと肩を揺らして俺の目をじっと見る。



「…ずっと前から好きだった」

心菜の瞳が揺れる。
やっと言えた。伝えられた。

「あたしも!瞬のこと…大好き」

「知ってる」
また可愛げのないことを言ってしまったが、嬉しくて仕方なくて。

抱きしめる力を強めた。
 

「じゃあ あたし達…っ」

「付き合お」


心菜の目を見て言うと嬉しそうにうんって頷いてて。


ゆっくりと唇を重ねた。何度も角度を変えて優しく。


「わわ、もう…」心菜は顔を赤くして俯く。


大事にするから…。


20歳の冬、恋人が出来ました。
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