お前のために歌うから。
瞬は翔太くんを見て何か思いついたようで、ぽんっと手を叩き。


「何だよ?」と苦笑いの翔太くん。


「あのさー…ちょっと里緒ちゃん預かってもらってもいい?」


えっ!?と思わず声が漏れる。

それって、もしかして…。


「心菜と2人で滑りてーから」

瞬が にやっと笑って言っているのが聞こえる。



わわ!思わず頬が火照る。


「おっけ」翔太くんは、そういうことならとニヤニヤ笑う。


茜も「よし、こっちは任せて」と此方もニヤニヤしながら言ってくれた。


「んじゃ行こ」

瞬はあたしの手を引っ張ってくれた。あたしは頷いて彼に付いていく。


わわ、何か照れる…。


私たちのことを里緒ちゃんが見ていることも分からないくらい、私は彼に夢中だった。


リフトに乗り、頂上に向かう。

「うわー、凄い!綺麗!」


山に雪が積もり、上から見ると別世界だった。

いざ山頂に立つと緊張して足がすくむ。

思ったより高い…。



「大丈夫かよ」
瞬があたしの顔を覗き込んで笑う。


「余裕だもん!」と返す。

すぐ強がってしまうのは昔からの悪い癖。


「じゃあ、ちゃんと付いてこいよ」と言われれば、うんと大きく頷く。


瞬が滑り出すと後に続く。


わー、凄い!綺麗!!



サラサラの雪をどんどん越えていく。

気持ちよかった。


ってか思ったより楽しい!



夢中になって滑っていると、もう地上が見えていた。周りを見ると茜たちの姿も。

茜はあたし達に気付いて大きく手を降ってくれる。



瞬が板を止める。


あたしも彼に続いて止めようとするけど…



その時だった。



あたしの前にスノボーに乗った子供が通る。
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