お前のために歌うから。
次の瞬間、彼の腕の中にすっぽり収まる。


「へ?」


突然のことだったため、何とも情けない声が出た。


「…心配した」瞬がそう言って私の頭をぽんぽんと優しく撫でてくれる。


「ごめんね?」私は小さい声で謝り、彼の服をぎゅっと握る。



「ね、瞬はスキーしてきていいよ?」

瞬だってしたいに決まってる。


「や、いーよ。心菜いないと面白くねーし」


可愛く照れたように笑う彼を思わず見つめる。


何それ、嬉しすぎる。


あたしは彼を見上げ、思わず「…瞬、だいすきっ」と告げる。


「今日は素直だねー」瞬はそう言ってクスクス笑う。


「たまにはそーゆうのもアリでしょ?」

「ん、いいと思う」


彼の片手があたしの頬に触れる。

キス、だよね。


ぎゅっと目を閉じた瞬間、優しく唇が重なった。

何度か触れ合うだけのキスを交わすと、ゆっくりと彼の舌があたしの唇を割り、口内に入ってきた。

「…んっ」


次第に舌を絡められ、深いキスに変わる。


勿論、こんなキスは初めてで。

そのまま強引にかつ優しくベッドに押し倒されると、目を見開き彼を見上げる。
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