最も危険な  ルームシェア
私は招待客にひと通りの挨拶をして回り

役員のトップと雑談を交わし

各テーブルの飲み物をすばやく目でチェックしながら

今回ハードとソフトの両面を委託したフロンティアITの若いスタッフたちに

オードブルを配って歩いた。

彼らは私の細かい依頼に応えてくれた。

その中に特に秀でた頭脳の持ち主であるイケメンがいた。

彼は私の最も重要な視覚の合格ラインを軽く突破した。

私はそっと彼に近づき

控えめにシャンパンを注いだ。

「ここのシステムは全て木村さんに制御されているようなものですわ。安心とは信頼の賜物ですわね。」

長身の彼は水も滴る何とかで

私は久しぶりに男の匂いをかぎとった。

彼は第二段階である私の嗅覚をものにしたことになる。

「カンパニー・深沢ディープ・バレー様は当社の重要な顧客リストのトップに掲げられていますよ。」

私の脳内にファンファーレが鳴り響いた。

彼の声音も合格ラインを遥かに越えた。

バリトン並みに深みのある低音は

痺れるような感覚すらある。

「お上手ですこと。」

第三の聴覚もパスだ。

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