最も危険な  ルームシェア
私はそれとなく歩を進めて彼をテラスへ誘導した。

「私が一番見たかった星空ですの。」

頭上に煌めく星々を見上げながらヒールでよろめいてみせた。

「大丈夫ですか?」

彼はとっさに私の腕を支えた。

私は腕から伝わる彼の体温にうっとりと頼れる心地良さを感じた。

彼はもう片方の手を私の腰にそっと回し

斜め後ろから私の耳元でなめらかに言った。

「今日はお疲れでしょう。」

完璧な男だ。

女慣れしている感はこの際どうでもいい。

最近こういったリードを熟知したイケメンにはお目にかかっていなかった。

しかもかなり身近にいることに

これからの彼の存在意味が見えるというものだ。

必ず私のものにしてみせるわ。

この時の私にはフィアンセ滝野ゆずるはすでに過去の男でしかなかった。

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