最も危険な ルームシェア

お亡くなりになる前日

私は奥さまの寝室に一人呼ばれた。

「華、もっと近くに。」

「はい。」

私は奥さまの枕元に膝まずいた。

奥さまのお声はとてもか弱く

お顔もお手も透き通るように白く

あの時私は病状を知らないまま

ただ励ましの言葉をかけることしかできなかった。

「華、よく聞いてちょうだい。」

「はい。」

私はさらに顔を近づけた。

「私の最後の願いを叶えてほしいの。」

「はい。」

私は怪訝に思った。

いくら可愛がられているといっても使用人は使用人だ。

その私にできることがあるのだろうか。

「これから言うことは病人のたわ言ではありません。滝野家の妻として残す言葉です。」

「はい。」

私は奥さまの目を真剣に見た。

「私はどうしても悔いてならないの。子供が欲しかった。」

私は何度その言葉を聞いたかしれなかった。

まさか私を養女にするとおっしゃるのだろうか。