最も危険な  ルームシェア
奥さまの葬儀の後

私はご当主に呼ばれ書斎へ入った。

「妻が君に言い残した件だが、君はどう思う?」

彼は最愛の妻を若くして失い

硬い表情で切り出した。

私は率直に言った。

「奥さまは私にとても優しく接してくださいました。本当の母のように。」

「うん。」

「私はそんな奥さまに恩返しをしたいという気持ちはありますが、私はまだ人を愛したことがありません。」

「うん。」

「こんなことを申し上げて良いのかわからないのですが。」

「どんなことでもいいよ。何を言われても私なら大丈夫だからね。言ってごらん。」

「私に愛し方を教えていただけませんか?」

ご当主はしばらく黙ったままだった。

< 78 / 94 >

この作品をシェア

pagetop