最も危険な ルームシェア

「仁科。」

「はい。」

私は滝野さんを見た。

「僕は律に婚約を破棄された。」

「そ、そうなんですか？」

気にしていたことなので私はどもってしまった。

婚約破棄にはかなり安堵できた。

「まゆさん、パパの力になってあげて。」

友里さんがいきなり言った。

「はっ？」

私はわけがわからず戸惑うしかなかった。

彼らの母である北城さんが話してくれた。

律さんの父親は友里さんの父親でもあり

北城さんは深沢秀栄の内縁の妻だとわかった。

友里さんは優しい母親の愛情たっぷりに育ったようだ。

「ママもパパのそばにいたいでしょ？」

「友里が心配しなくても私は彼の想いをたくさんもらっているから今のままで充分よ。」

北城さんはそう言って控えめに微笑んだ。

私はそれを見てうらやましく思った。

離れていても相手の愛を確かに感じられることに

お互いの想いや大人の繋がりは

目に見えなくても深いものだと知ることができた。

私も滝野さんとそういう風な関係を築いていけたらと願った。

前妻である律さんの母親はカナダで再婚したらしく

北城さんを正妻に迎えたい深沢氏にはそれに反対する律さんの兄が二人いた。

ところが他にも問題が起きたらしかった。