even if
『渋谷くん、犬好きなんだね』

飼い主さんらしきおばちゃんが戻ってきたので、私たちは犬にバイバイをして歩き出す。

『うん。特にああいう日本犬が』

渋谷くんは、頷きながらそう言う。

『あ、わかる。日本犬のしっぽってかわいいよね』

『そうそう、ふさふさで丸くてさ。目もかわいい。賢そうだし』

『チョビはバカだからなぁ…』


私がそう言ってしょんぼりすると、渋谷くんは吹き出した。

『チョビもかわいいだろ。そりゃバカかもしれないけどさ』

『うん…。でも、私がもし犬を飼うなら、日本犬にしようと思う』

『そうしよう。二人で柴犬とか飼おう。でも、俺もななちゃんも昼間いなかったら、寂しがるかな。てか、柴犬て室内で飼えるかな…』

うーん、と眉を寄せて真剣に考えている渋谷くんを見て、私は首をかしげる。


渋谷くん、何を言ってるのかしら…。
私と渋谷くんで、犬なんて飼えるわけないのに…。

でも、口には出さなかった。

いつか、二人で犬を飼えたらいいな、とちょっと本気で思ったから。


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