even if
『いっつも一生懸命でさ。いっつも優しくて、いっつも笑顔だろ、ななちゃん』

渋谷くんは、遠くの方を見ながら続ける。
夕焼けをうつして橙色に染まり始めた海は穏やかだ。

『でも、たまに俺は焼きもちやくんだよ。ななちゃんはみんなに優しいからさ。そういうところが好きなくせに、俺にだけ笑ってほしい、とか思うんだよな』

渋谷くんは、視線を私に戻す。

『俺は、ななちゃんの過去にも嫉妬してる。ななちゃんが好きだったやつとか、ななちゃんの…初めてのやつとかさ』

そう言った渋谷くんの顔が、本当に寂しそうで、私は泣きそうになる。
そんな顔、しないで。

『それも含めて、今のななちゃんなのにな。分かってるけど、悔しいんだよ。あぁー、もうなんで俺ってこんなガキなんだろ…』

ため息をついて、頭を抱えた渋谷くんを見ていたら、愛しさで胸がいっぱいになる。

渋谷くんの正面に座ると、私は渋谷くんの胸にギュッと抱き着いた。
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