even if
『平井先生、ちょっと』


教頭に呼ばれたのは、始業式の翌日、朝の職員会議が終わって保健室に向かう途中だった。

教頭のあとについて行きながら、私は小さなため息をついた。
提出した書類に不備でもあったかな。
お説教なら、短めでお願いします。



『平井先生、座ってください』

面接の時以来の応接間に通されて、私は体を固くした。
これは、書類に相当まずいミスがあったに違いない。


教頭の顔からは、感情が読み取れない。
これはヤバいかも。

先生に呼び出された生徒みたいに、上目使いでソファに腰かけた。


『単刀直入にうかがいます』

教頭は、私の顔を冷たい目でじっと見たまま話し出す。
蛇みたい…。いまにも、教頭の口からチョロリと細長い舌が出てきそうだ。

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