even if
保健室のドアが開いた音がして、私はゆっくり顔を上げた。

そこには渋谷くんが立っていた。

私はすぐ顔を伏せる。
渋谷くんは、もう会わないでいよう、なんて言葉ではきっと納得しない。

きっと、怒った声でこう言うだろう。
『ななちゃん、なんでそんなこと言うんだよ』

それくらいのことは分かっていたし、それよりも何よりも、その言葉を口に出すのが怖い。

もう会わない、なんて。
きっと、渋谷くんは悲しい目をする。
いつかみたいに、怒った顔で、悲しい目をする。


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