even if
ぺたん、と冷たい床に座り込んだ。
胸元のハートがしゃらり、と揺れる。


『…ふっ…ふふ…』

あー、笑っちゃう。

渋谷くんは、嘘が上手だね。
私、見事に騙されちゃったよ。
愛されてる、って錯覚しちゃってたよ。

そっか。

やりたいだけだったのか。
暇潰しに遊んでただけだったのか。
もらったネックレスなんかしてきちゃって、めちゃくちゃ、恥ずかしいじゃん、私。
バカみたい。
返せばよかった。
そうだ、あとで捨てちゃおう。


好きだよ、って言ったのも。
俺が守るから、って言ったのも。
ななちゃんだけ見てる、って言ったのも。
これからのななちゃんは全部俺がもらうから、って言ったのも。

全部、嘘だったのか。

私が一度でも、渋谷くんに『好き』って言ったら、どうするつもりだったんだろう。

バカにして、笑いたかったのかな。
ひどくない?それ…。


笑っちゃう。


『…ふっ…ふぇっ…』

白い床に、ポタポタとこぼれる雫。

これは…なに?

ポタポタ
ポタポタ
ポタポタ

『…っう…ふぇ…うぅ…』


そっか。
私、泣いてるんだ。

保健室は泣いていい場所だもんね。


だから、今だけ泣かせてください。


どうか…
今だけは誰も入ってこないで…。



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