even if
渋谷くんがいなくても、地球は太陽の回りを回るし、自転もする。
だから、毎日朝がくるし、季節はだんだん秋に近づいていく。
私だけ、夏においてきぼりで。





『ななちゃん先生、渋谷先輩さ、3年のきれいな先輩と付き合ってるって本当?』

その日、昼休みに笹井さんと遊びに来ていた綾部さんの言葉に、持っていたボールペンをぽとり、と落としてしまった。

『きれいな…先輩?』

どこからか、私の声が聞こえる。

『うん、最近毎日一緒に帰ってるの。美男美女でお似合いなんだけど、本当にあの二人付き合ってるのかな?』

綾部さんはボールペンを拾いながら、話を続ける。

『お似合いなんだけどさぁ。なんかしっくりこないのよね。美男美女すぎるからかな。渋谷先輩、彼女作らない人だって、勝手に思ってたからかな…』

きれいな先輩。
それはきっと、松原さんのことだろう。
松原さん、やっと渋谷くんに思いが通じたんだね…。

『…ななちゃん先生?』

『あぁ、ごめん。私、わからないや。最近、渋谷くん来ないしね』

『そっかぁ。受験生だもんね。さぼりはやめたのかぁ』

そうだよ。
さぼりも、その他の色んなこともやめたんだよ…。
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