even if
翌朝、起きたら見事なほどの二日酔いだった。

『はぁ…頭痛い…』

一瞬、仕事休んじゃおうかな、なんて考えが頭をよぎる。

でも、だめ。
保健室に来た生徒を迎えるのは、私なんだから。

シャワーを浴びて、頭痛薬を飲んだら、少しましになった。


『よし、行こう』

大丈夫。
私はきっと、大丈夫。



『ななちゃん先生、おはよう』

朝一番のお客さんを見て、休んだらよかった、と後悔しそうになった。
そして、すぐその考えを打ち消す。

『松原さん、おはよう』

松原さんは、ふふ、と嬉しそうに笑いながら保健室に入ってきた。

『ななちゃん先生にご報告がありまーす』

『ええ?なにかな?』

私は笑いながら聞く。
たぶん。いや100%の確率であの話だけど。

『碧がね…付き合おうって言ってくれたの!!』

『えぇー、うそ。よかったね、松原さん』

頬を赤く染めて嬉しそうに笑う松原さんを見ながら、心が折れそうになるのを必死でこらえた。

『夢みたい。碧、すっごく優しいの。私のこと、大好きだって』

『へぇ。あの渋谷くんがねぇ』

お願い。
誰か来て。
遠藤くんとか、綾部さんとか、桜井先生とか、校長先生とか、こうなったら教頭でもいいから。
誰か来て。
私をここから連れ出して。


『碧って、意外と甘えん坊でさ。かわいいの』

『そっかぁ、見えないね』

お願い。
誰か。

『あっ、そろそろ、教室戻らないと、ヤバい』


時計をチラッと見て、松原さんは立ち上がった。

『ななちゃん先生、聞いてくれてありがとね』


最後にそう言って、ドアを閉めた。


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