even if
『ななちゃん先生、桜井先生と結婚するの?』

『綾部さんまで…しないから』

『だよね』

これで何人目だろう。
私は疲れはてて、苦笑する。

『一年生から三年生までまんべんなく聞かれるのはどうして?』

『部活とかで広まってるんじゃない?それに、桜井先生もでへへ、みたいに笑うから余計に』

『はぁ…』

桜井先生、そこはちゃんと否定してほしい。

『私はしない、と思ってたよ』

なぐさめるように、綾部さんが肩をぽん、と叩く。

『ありがと…』

『けどさぁ。先生同士で恋愛したっていいじゃんねぇ?先生だって人間なんだし』

『人間って…。なぁに?それ』

『なんかさ、先生にも私生活があるんだな、って思ってさ。好きな人だっていて、彼氏だっていて、家族だっていて。だけど、私たちって、つい先生も人間だってこと忘れちゃう。先生はつねに先生みたいな気がしちゃう。だけど、やっぱり先生たちも私たちと同じように普通に恋したりするんだな、って、思ったの』

なんかわかる気がする。

『私も、学生のころ、同じこと考えてた。生活指導部の先生は、私生活でもきっちりしてる、みたいなね?』

『そうそう。でも、家ではすっごくだらしなかったりするかもしれないんだよね』

私と綾部さんは顔を見合わせてくすくすと笑った。

笑いながらふと、この噂を渋谷くんも知っているのだろうか、と思った。


渋谷くんには関係ない話か…。


私が誰と結婚しようが、渋谷くんはきっと、興味も関心もないんだから。



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