even if
『あの…どうぞ』


布団をベッドの上にほりなげてカーテンを閉めると、丸いすをすすめた。
さっき、久しぶりに渋谷くんと話したと思ったら、今度はおとうさん。
今日は渋谷くんデーだわ…。
でも、どうしてここに来たんだろう…。



『急にきてすみません』

渋谷くんのおとうさんは、穏やかに微笑みながら椅子に座る。

ボタンダウンの白いシャツにチノパンという格好で、いかにも白衣だけ脱いで着ました、という感じがした。

その優しそうな笑顔を見ていると、前に桜井先生が地元で人気の小児科、だと言っていた意味が分かった。

私がもし母親だったら、きっとこの先生に診てもらいたい、と思うだろう。


『さっきまで三者面談でして』

そうか…。
そう言えばそうだった。
今週から三者面談が始まって、短縮授業なんだった。
だから、渋谷くん、屋上にいたのか。
早く授業に戻りなさいよ、とか言っちゃった。




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