even if
christmas eve
年末が近付き、町はクリスマス一色になっている。
外を歩けば、マライヤキャリーの歌声が嫌でも耳に入ってくるし、テレビをつければ「世界で一番大切な人と行こう」なんてテーマパークのCMが流れる。
仕事帰り、ウィンドーに飾られた、雪の結晶やトナカイを横目で見ながら、ため息をついた。
今日何度目のため息だろう。
思い出したくないのに、昼間のことをどうしても思い出してしまう。
『碧ね、受験校のことで進路指導室に呼ばれてるから、ここで待たせてもらってもいい?』
放課後、保健室にやってきた松原さんはそう言って、ソファにすとん、と座った。
『もちろん』
そう言って、書類を引き出しにしまうとき、私の手はわずかに震えていた。
こわい…。
松原さんから、渋谷くんの話を聞くのが怖かった。
だから、
『松原さんは、どういう大学に進むの?』
こっちから、話題をふった。
『私は外大。将来CAになりたいんだ』
『CAかぁ。松原さん、背も高いし、美人だから、制服も似合いそうだね』
私がそう言うと、松原さんはそうかな、と照れ臭そうに笑いながら続ける。
『でも、CAっていろんなとこに行くから、碧とは遠距離になるかな。そうなったら嫌だな』
『…そうだね。でも、大丈夫じゃない?渋谷くんと仲良さそうだもん』
どうしてこんなことを言わなければならないのだろう。
胸の痛みをごまかしながら、私は笑う。
『えへへ…。まぁラブラブ…。こないだ…キスされちゃった』
『そっかぁ』
笑え、私。
『クリスマスにね。泊まりにこないか、って誘われてるんだ…。それって…やっぱり、そういうこと…だよね』
『…うん。ちゃんと避妊してもらってね』
どうしてこんなアドバイスなどしなければならないんだろう。
『…渋谷くんなら…ちゃんとしてくれると思うけど』
『そうだね。碧はきっとちゃんと避妊してくれる。初めてだから、ちょっと怖いけど…碧とならいいかな、って』
『…頑張って。ていうのも変か』
あはは、と声に出して笑った。
私はうまく笑えていただろうか。
嘘つくの下手だな。
自分でも、そう思う。
外を歩けば、マライヤキャリーの歌声が嫌でも耳に入ってくるし、テレビをつければ「世界で一番大切な人と行こう」なんてテーマパークのCMが流れる。
仕事帰り、ウィンドーに飾られた、雪の結晶やトナカイを横目で見ながら、ため息をついた。
今日何度目のため息だろう。
思い出したくないのに、昼間のことをどうしても思い出してしまう。
『碧ね、受験校のことで進路指導室に呼ばれてるから、ここで待たせてもらってもいい?』
放課後、保健室にやってきた松原さんはそう言って、ソファにすとん、と座った。
『もちろん』
そう言って、書類を引き出しにしまうとき、私の手はわずかに震えていた。
こわい…。
松原さんから、渋谷くんの話を聞くのが怖かった。
だから、
『松原さんは、どういう大学に進むの?』
こっちから、話題をふった。
『私は外大。将来CAになりたいんだ』
『CAかぁ。松原さん、背も高いし、美人だから、制服も似合いそうだね』
私がそう言うと、松原さんはそうかな、と照れ臭そうに笑いながら続ける。
『でも、CAっていろんなとこに行くから、碧とは遠距離になるかな。そうなったら嫌だな』
『…そうだね。でも、大丈夫じゃない?渋谷くんと仲良さそうだもん』
どうしてこんなことを言わなければならないのだろう。
胸の痛みをごまかしながら、私は笑う。
『えへへ…。まぁラブラブ…。こないだ…キスされちゃった』
『そっかぁ』
笑え、私。
『クリスマスにね。泊まりにこないか、って誘われてるんだ…。それって…やっぱり、そういうこと…だよね』
『…うん。ちゃんと避妊してもらってね』
どうしてこんなアドバイスなどしなければならないんだろう。
『…渋谷くんなら…ちゃんとしてくれると思うけど』
『そうだね。碧はきっとちゃんと避妊してくれる。初めてだから、ちょっと怖いけど…碧とならいいかな、って』
『…頑張って。ていうのも変か』
あはは、と声に出して笑った。
私はうまく笑えていただろうか。
嘘つくの下手だな。
自分でも、そう思う。