even if
結局のところ、私と桜井先生は恋人にはなれない、と思う。

そのかわり、最高の友だちにはなれる、と思う。


それを、桜井先生が望んでいるとは思えないから言わないけど。


私にだって、それくらいの常識はあるのだ。






あんなことがあったのに、桜井先生は次の日も変わらない態度で接してくれた。

『昨日は取り乱してしまってすみませんでした』

朝、私がそう言うと、あはは、と笑って、

『いや、俺のほうこそすみません。あんなこと…まだ言うべきじゃなかったですね』


この人のこういうところが私はいいと思う。
カラッとしてるし、なんていうか、気持ちがいつも一定に保たれている。
そういうところがいい。
かきまわされずにすむから。
安心する。


『また行きましょうね』


桜井先生はそう言って、教室に向かって歩いていく。

その後ろ姿も渋谷くんに似てない。
だから、いい。

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