even if
おでこに手を置いて、うつむいた。


デスクにポタポタと涙が落ちる。


『…もうどうしよう…どうしたらいいかわからないよ』


そう呟いた時、ノックの音もなく、ドアが開く音がした。


顔をあげなくても誰だか分かった。
だから、あげなかった。


渋谷くんは、パタンと静かにドアを閉めると、そのままそこで立ち止まっている。


私はそろそろと顔を上げた。


黒い短い髪
今日はきっちりしめたネクタイ
ブレザーからのぞくキャメル色のベスト
胸元のピンクのリボン
卒業証書の筒と、カバン


『…松原が行けって…』

『…バカ』

違う。
こんなことを言いたいんじゃない。


『ばかぁ…』




私は走った。
すぐそこの渋谷くんを捕まえるために。

頭はまだ混乱してる。


だけど…


だけど…


言いたいことが、あるの。


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