even if
『すきぃ…』


渋谷くんに思いきり抱きついた。
首に腕を回して、おもいっきり。


渋谷くんの手から、ポロリ、と卒業証書が落ちて、コロコロと転がり、ソファに当たって止まる。


『…っう。…ふぇぇん……渋谷くん、だいすきぃ…』


『…え?』


『…うわぁぁぁん…』


渋谷くんが固まってる。
どうしよう。
わけわかんない。
でも、もうとまらない。
どうしようもない。



『…ま、まつ、ばらさんに全部、聞いたっ…ほんとの、こと…渋谷くんのばかぁ…』


『…そっか…』

渋谷くんが私をギュッと抱き締める。

『…ななちゃん』

渋谷くんの、ななちゃん、久し振りに聞いた。
もう…先生って呼ばないで。



『…俺、ひどいこと、たくさん言ってごめん…。ごめんな…』

違う…。
私はふるふると首を横に振る。


『ずっと、ななちゃんにふれたかった。抱き締めたかった。好きだよ、って言いたかった。でも…できなかった。ごめんな…』


分かってる。
まだ頭は混乱してるけど、こっちが本当の渋谷くんだっていうのは分かる。
感じる。

『ななちゃんを守る方法が他に思い浮かばなかった。ななちゃんに嫌われないと、俺ななちゃんから離れられなかったから…ごめんな』


私もそうだった。
渋谷くんと離れなくて、ひどいこと言ったね。

渋谷くんなんかだいっきらい。
中途半端に優しくしないで。

私、いつかそう言ったね。
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