even if

『ななちゃん…顔見せて?よく見たいから』


渋谷くんの言葉に、私は手の甲で顔をごしごしこすってから、首に回した腕をほどく。


『ななちゃん…すごいことになっちゃってるよ』

渋谷くんが目を細めて私を見る。


『髪もボサボサだし。鼻も目も真っ赤だし…。マスカラも取れてる…。なのに、なんでかな』


――ナノニ、ナンデカナ――


『どうしようもなく、かわいいんだよ。俺は、ななちゃんが、大好きなんだよ』


『じゃあ、キスして』


渋谷くんが、目を丸くする。


『今?ここで?』

『だめなの?』

『いいけど…俺、我慢できるかな…』


渋谷くんは、私の大好きないたずらっぽい笑顔でそう言うと、私の唇をふさぐ。

そっと、なんて余裕はなかった。
私も渋谷くんも。

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